福島原発事故による放射能・半減期と崩壊定数について
今回の福島原発の事故で飛散している放射性物質としては、ヨウ素131、セシウム137、ストロンチウム90などがあります。ヨウ素131はキセノン131になり、β線を放出します。セシウム137はバリウム137になり、β線とγ線を放出します。ストロンチウム90はイットリウム90になり、β線を放出します。
いま、ヨウ素131の原子核が、10000個あったとします。β線の放出した後は、キセノンになるので、ヨウ素131の原子核数は減少していきます。半分の5000個になるまでの時間が、8日くらいです。それからまた8日たつと、つまり、16日後には、さらに半分の2500個になります。この、半分になる時間のことを、「半減期」と言います。
一方、セシウム137の場合は、10000個あった原子核が半分になるまで、30年位かかります。ストロンチウム90も、「半減期」が28.8年です。「半減期」が比較的短いヨウ素131は、早く減少するのですが、時間あたりの放射される放射線量は多くなります。逆に「半減期」が比較的長いセシウム137やストロンチウム90は、なかなか減少しないのですが、時間あたりの放射線量は少なくなります。つまり、「太く短い」のがヨウ素131で、「細く長い」のがセシウム137やストロンチウム90です。
次に、「半減期」と密接な関係のある「崩壊定数」について紹介します。
単位時間あたりに放射性原子核が崩壊する確率のことを「崩壊定数」といいλで表します。いま、時刻tにおける放射性原子核(未崩壊)の数をN(t)とします。そうすると、微小時間 dt の間に崩壊する核の個数 dN は
dN = -λN dt ・・・・・①
と表されます。①から dN/dt = -λN となり dN/N = -λ dt
ですから、両辺を積分して、
∫N-1 dN = -λ∫dt + c (ただしcは積分定数)
logeN = -λt+c
したがって、N(t)は
N(t) = e-λt + c= e-λt ec = Ce-λt (ただし C=ec)
そこで初めの時刻 t = 0 のとき N =N0 とする。
(これを、「初期条件」といいます)C = N0 となり、
N(t) = N0e-λt ・・・・・②
という式が得られます。
一方、「半減期」(記号T)については、このような式で表されます。
N(t)=N0(1/2)t/T ・・・・・③
②と③の右辺同士を比較して、
N0e-λt=N0(1/2)t/T e-λt=(1/2)t/T
両辺の自然対数をとって、
-λt=-(t/T)・ln 2
∴ λ=ln 2 / T ・・・・・④
という関係式が得られます。
例えば、ヨウ素131の半減期はT=8日ですが、秒にすると
T=8日=8×24×3600秒=691,200秒になります。
これを、④式に代入して 崩壊定数λ を求めると、λ= 1/1000000となります。
例えば、1,000,000個 のヨウ素131原子核があると1秒あたり
1,000,000×λ=1 個 崩壊することになります。
これは、1ベクレル[Bq]に相当します。
先日、出荷規制されたホウレンソウの放射能の強さは、例えば群馬県の伊勢崎市で1kgあたり2000ベクレルでした。
ということは、ホウレンソウ1kgに付着したヨウ素131から、1秒間あたり2000個のβ線が放出されていることになります。